お客様事例
お客様事例
2017年10月3日公開
超ハイテン材の利用が拡大しつつある中、スプリングバックの予測が難しく、適切なNCデータを作成できないため現場でパネル合わせやバリ改修といった作業工数がかかっていた。
CADmeisterのFORM-EXを導入し、リバースエンジニアリングに取り組み、トリム型の加工用データ作成プロセスを変更した。
その結果、トリム型モデリング工数の大幅な削減、ならびに製造現場で課題となっていたトリム型のパネル合わせやバリ改修工数の大幅な削減につながった。
株式会社丸順は、昭和27年に金型メーカーとして創業し、現在は自動車部品のプレス部品メーカーとして部品の研究開発から製造までを一貫しておこなっている。
取扱部品は自動車の車体プレス部品で、フロントピラー等の車体骨格部品、フロント/リアバンパーの安全補強部品、ハイブリッドカー部品や機能部品を生産している。
これら製品を成形する金型も大型プレス金型から高張力鋼板金型、精密金型まで実績を持つ。
超ハイテン材への対応が求められている
予測しきれないスプリングバックによる修正工数を削減したい
近年自動車業界では、環境に配慮した燃費の良い自動車の開発が進み、軽量化と車体剛性の両立において超高張力鋼板(超ハイテン)への移行が求められている。
超ハイテンは硬く、伸びも少ない素材である。
丸順では超ハイテン材の成形にあたり、成形解析ソフトウエアを使用してスプリングバックの予測をおこなっていた。
しかし、超ハイテン材の場合正確な予測は難しく、
実際のパネルに適したトリム型の加工データが作成できずに、製造現場でパネル合わせやバリ改修に多くの工数を費やしていた。
この課題を解決するため、CADmeisterの
FORM-EX(力学的ねじれ見込み_STL)
を導入した。
「引っ張り強度が1180MPa級の超ハイテン材になると、スプリングバック量はなかなか予測しきれません。
そのため、現場での修正、調整にかなり時間が掛かっていました。
具体的には、ドロー型で成形したパネルがトリム型に合わないためにパネルを手で合わせたり、
トリム型でパネルが固定されず空中でトリムされることでバリが発生するのでその改修をしていました。
時間にしたら何十時間といったところでしょうか。」と山北氏は苦労した点を話す。
リバースエンジニアリングに取組み、トリム型のデータ作成プロセスを変更
NCデータ作成工数・現場での作業工数を大幅に削減
FORM-EX
は、測定データから得られたSTL形式のデータに対し、CADの製品面を押し付けて変形することができる機能である。
更に、押し付け変形のみならず、製品面を元面として、測定したSTLとの差分量分を押し離す、
つまり逆に見込むことも可能なので見込み変形用に本機能を活用することもできる。
FORM-EX 【力学的ねじれ見込み STL】 機能の操作イメージ
丸順ではFORM-EX
の導入により、従来の作業プロセスから脱却した。
「NCデータを作成するためのCADモデリングを担当しています。
以前は、現場からスプリングバックを原因とする修正工数が多くて困っていると度々報告を受け、モデリングも試行錯誤していました。
FORM-EX
導入後は、ドロー成形後のパネルを測定して得たSTLデータにCAD面を押し付けてモデリングをおこない、
そのCADデータをもとにトリム型の加工データを作成するという、リバースエンジニアリングを用いたプロセスに変更しました。
今では、現場の修正作業もほとんど無くなったようです。
またUELの担当の方から適切な提案をいただいたり、決め細やかなサポートをしていただけるので本当に助かっています。」と棚橋氏は話す。
リバースエンジニアリング作業フロー
「トリム型でもパネルがフィットするようになり、パネル合わせの工数やバリの改修作業がほぼ無くなりました。」(山北氏)
世界初! 1180Mpa超ハイテン材 準外板部品の量産を実現
UELの提案、サポートにも期待
丸順では超高張力鋼板になるほどプレス加工が難しくなるという課題を、人の知識や技術を集積しITとの融合による独自技術で克服し、
超高張力鋼板に対応する次世代金型づくりに取り組んでいる。
今回、冷間プレスで超ハイテン材を使ったセンターピラーの量産を実現した。
1180Mpaの超ハイテン材を使用した準外板部品の量産は世界初の快挙である。
この部品は、今秋発売の車種に採用されている。
「現状に満足することなく、常に改善を求める姿勢が大事だと考えます。
他ではやっていないことを実現したい。これからも新しいことにチャレンジし続けていきたい」(山北氏)
「FORM-EX
は、CADmeisterのバージョンが上がるごとに押し付けの精度も向上していると思います。
ただ、精度がよくなった分、STLデータにヨレやうねりがあるとそれが面データにも反映され修正が必要となります。
この作業の効率化は今後の課題です。」(棚橋氏)
「CADmeisterにどんな機能があるかをもっと知りたいです。
今度ぜひ勉強会を企画してください。
設計メンバーも製造メンバーも含めて、みんなで聞きたい。
引き続きUELのサポートと新たな提案を期待しています。」(棚橋氏、山北氏)
「見込み機能の他にも、Easy系のモデリング機能は操作性も良く大変使いやすいです。
特に
フィレット面整形
機能はフィレット面が合流しているところを綺麗になめらかにモデリングできるので頻繁に使っています。」(棚橋氏)
「FORM-EXを導入しトリム型のデータ作成プロセスを変更して、これほど現場の作業工数が削減できるとは思っていませんでした。
期待以上でした。」(山北氏)
2017年8月取材
※記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
※自治体・企業・人物名は、取材制作時点のものです。
(編集後記)
丸順様は、設計の部門の方も現場部門の方も、部署の垣根を越えて協力し合っていらっしゃるという印象を受けました。
そういった良い関係性の中で、世界初となる素晴らしい技術力も生み出されるのだと思いました。
丸順様のすぐそばには、全国の鉱山・金属業の総本宮として古くから信仰をあつめる南宮大社、そして南宮山があります。
南宮山は関ヶ原の戦いで西軍の毛利家が陣取っていた地ということで、麓へ行きしばし戦国時代に思いを馳せました。
取材担当 牧野