なぜ社内向けメタバースが注目されているのか
リモートワークやハイブリッドワークが当たり前になり、「働きやすくなった」という一方で、こんな悩みもよく聞かれます。
- 雑談が減って、チームの雰囲気が見えにくい
- 新人や中途メンバーが、組織になじみにくい
- オンライン会議は用件の話だけで終わってしまう
こうした課題に対して、社内向けメタバースを「新しい社内の“場づくり”の手段」として検討する企業が増えています。
この記事では、
- なぜ社内向けメタバースが注目されているのか
- どんな社内イベント・場面で活用しやすいのか
- 社内に定着させるための設計・ルール・ステップ
を、PC・スマホ両方の利用を想定しながら、誰にでも分かりやすい言葉で整理していきます。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の企業・環境・状況への適用や効果を保証するものではありません。内容の利用は読者ご自身の判断と責任にてお願いいたします。参考として合わせてださい。
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監修・執筆:UEL株式会社編集部
UEL株式会社のTechデザイン企画部と現場に精通した社内有識者が監修・執筆しています。
目次
なぜ「社内向けメタバース」が注目されているのか
リモートワークで失われた雑談と一体感
フルリモート/ハイブリッドワークが広がる中で、多くの会社でこんな変化が起きています。
- ちょっとした相談がしづらい
- 偶然の会話や雑談がほぼなくなった
- 部署をまたいだつながりが生まれにくい
オンライン会議は便利ですが、基本的には「目的がはっきりした場」です。そのため、用件以外のコミュニケーションが生まれにくいという弱点があります。
そこで、社内向けメタバースでは、例えば次のような「場」をつくることができます。
- いつでも入れる仮想オフィス
- たまたま出会える休憩スペース
- 部署を超えて集まれるラウンジ
こうした空間を用意することで、雑談や偶然のつながりをオンライン上で再現しやすくなるのが、社内メタバースの大きな特徴です。
オンライン会議だけでは足りない理由
オンライン会議ツールは、情報共有や意思決定にはとても便利です。一方で、「社内コミュニケーション全体」を支えるという意味では、限界もあります。
オンライン会議だけでは足りないポイントの例:
- 会議の前後の立ち話がない
- 話す人が固定されがちで、参加者が聞くだけになりやすい
- 会議に参加していない人の雰囲気が分からない
- 「なんとなく集まる」「なんとなく話す」場になりづらい
つまりオンライン会議は、「話す相手・目的・時間が決まっているコミュニケーション」には強い一方で、「偶然の出会い」や「弱いつながり」をつくるのは得意ではないと言えます。
そこで社内メタバースを使うと、ふらっと入れる共有スペース、テーマごとの部屋(プロジェクトルーム、雑談スペースなど)、距離感や位置関係による「話しかけやすさ」の調整などが可能になります。このように、オンライン会議とは別の「社内の居場所」を設計しやすくなるのが、メタバース活用のポイントです。
社内でメタバースを使うメリット・デメリット
社内向けにメタバースを使うときの、代表的なメリット・デメリットを整理しておきます。
| 観点 | メリット | デメリット・注意点 |
| コミュニケーション | 雑談や偶然の出会いを生みやすい/部署をまたいだ交流を設計できる | 初めは「何を話せばよいか分からない」状態になりがち |
| 参加のしやすさ | 場所を問わず参加できる/アバターで心理的ハードルを下げられる | ツールへのログイン・操作に慣れる必要がある |
| 社内文化 | 「新しい取り組みを試す会社」というポジティブな印象をつくりやすい | 合わない層もいるため、強制すると逆効果になることも |
| 運用 | 全社イベントや研修をオンラインで一体感をもって実施しやすい | 企画/運営の工数がゼロではない(場づくりの担当が必要) |
大事なのは、
- メタバースを「何でもできる魔法のツール」と期待しすぎないこと
- 自社の文化やメンバーの特性に合わせて、ちょうど良い使い方を探すこと
この2点です。
社内での主なメタバース活用シーン
全社集会・キックオフ・表彰式
全社集会やキックオフ、表彰式は、「社員みんなで同じ場を共有している感覚」が大切なイベントです。
メタバースを使うと、次のような工夫ができます。
- 全国・海外拠点のメンバーを、一つの仮想会場に集められる
- ステージやスクリーンを使って、イベント感を演出できる
- 表彰者のアバターにスポットライトを当てるなど、特別感を出しやすい
オンライン会議との違いのイメージ:
- オンライン会議:画面共有+顔出しで会議の雰囲気
- メタバース:大きな会場・ステージ・拍手エモートなどでイベントの雰囲気
特に「表彰式」「年間MVP発表」などの社内イベントは、演出によって特別な瞬間をつくりやすいため、社内メタバースと相性が良いシーンです。
部署横断の交流会・部活動・オフサイト
部署をまたいだ交流会や、社内の部活動・サークル活動、オフサイトミーティングも、メタバースとの相性が良い領域です。
活用イメージ:
- 部署横断ランチ会:テーブルごとにテーマを決め、アバターでランチトーク
- 趣味コミュニティ:共通のトピックで定期的に集まる「オンライン部室」
- オフサイトミーティング:普段と違う場で、チームの今後や課題を話し合うワークショップ
リアル開催だと、場所や移動の都合で参加できる人が限られますが、メタバースなら遠方のメンバーも含めて気軽な横のつながりを作りやすくなります。
内定者・新入社員のオンボーディング
内定者や新入社員が会社になじむまでの期間は、特に「人とのつながり」が重要です。
メタバースオンボーディングでできることの例:
- バーチャルオフィスツアー(部署紹介・フロア紹介)
- 先輩社員との座談会・相談会
- 同期同士が気軽に話せるコミュニケーションスペース
単に説明を聞くだけではなく、次のような設計にすることがポイントです。
- その場で質問できる
- 同期同士で自然に会話が始まる
- 何度でもフラッと立ち寄れる
こうした設計によって、「人との接点」を増やすオンボーディングが実現しやすくなります。
気軽に集まれる場をつくるためのポイント
常設スペースとイベント用スペースの使い分け
社内向けメタバースを定着させる鍵は、なんといっても「気軽さ」です。まず、メタバース空間の使い方を大きく2種類に分けます。
- 常設スペース:いつでも入れる・日常的に使う場所
- イベント用スペース:日時を決めて集まる場所(全社集会・研修など)
この2つをあえて分けることで、日常の雑談や軽い相談は「常設スペース」、特定の目的の集まりは「イベント用スペース」といったように、社員が「どこに行けばいいか」をイメージしやすくなります。
構成イメージ:
- 常設:ラウンジ/カフェスペース/雑談エリア
- イベント用:ホール/セミナー会場/ワークショップルーム
「とりあえず入ったら誰かいるかも」と思える常設スペースは、社内メタバース成功の重要な要素です。
顔出し・アバター・ニックネームのバランス
メタバースならではのポイントとして、「どういう姿で参加するか」があります。
- 顔出し(カメラON)
- アバター(キャラクター)
- ニックネーム/本名表示
設定の考え方の一例:
- 全社集会・公式イベント:表示名は本名(所属付き)、アバター+必要に応じて顔出し
- 雑談スペース・部活動:アバター+自由なニックネーム(ただし社内ルールの範囲で)
- 1on1・評価面談など:従来どおりオンライン会議ツールで顔出し、など使い分ける
大事なのは、「この場はどんな温度感か」を示すルールをあらかじめ共有しておくことです。
参加しやすい時間帯・頻度・所要時間の設計
「メタバースで雑談しよう!」と呼びかけても、時間帯や頻度、所要時間の設計を誤ると、参加率は上がりません。
設計のポイント:
- 時間帯の例:昼休み前後(12:00〜13:30)、 終業前の30分(17:00〜17:30 など)
- 頻度の目安:週1〜月1など、無理なく続けられるペースからスタート
- 所要時間の目安:15〜30分程度の「ちょっと顔を出せる」長さ
特に、最初のうちは参加ハードルを下げるために、「途中参加・途中退出OK」「聞くだけ参加OK」といったメッセージも併せて伝えると、参加しやすくなります。
社内イベント企画と進行の実践ノウハウ
目的別フォーマット(情報共有/対話/ワークショップ)
ここからは、メタバース上で社内イベントを企画・進行するときのポイントを整理します。まず、イベントの目的によって進行の型(フォーマット)を決めておくと、企画がぐっと楽になります。
目的別フォーマットの例:
- 情報共有:キックオフ/全社説明会
ステージ登壇+Q&Aコーナー - 対話:部署横断座談会/社長との対話
小グループに分かれてラウンドテーブル形式 - ワークショップ:オフサイト/アイデア創出
グループごとにエリアを分けてディスカッション
フォーマットを決めるときのポイント:
- 「話す中心は誰か?」(経営陣/ファシリテーター/参加者全員)
- 「どれくらい双方向性を持たせたいか?」
- 「アウトプットは何か?」(決定事項/アイデア/感想 など)
を決めてから、場の形を考えると設計しやすくなります。
アイスブレイクと小グループ対話を組み込む
メタバースの社内イベントでありがちなのが、「せっかく場を用意したのに、誰も話さない…」という状態です。
これを避けるために、最初の10〜15分で場を温める仕掛けを入れましょう。
アイスブレイクの例:
- 「今日の気分を一言で」チャットに投稿してもらう
- アバターで「今行きたい場所」の近くに集合してもらう
- 簡単な二択アンケート(コーヒー派?お茶派?など)
その後は、3〜5人程度の小グループに分けて話してもらい、テーブルごとにテーマを決めておくと、いきなり大人数での発言を求めない設計になり、参加しやすさがぐっと上がります。
発言しやすくする仕掛け(チャット・スタンプ・匿名質問など)
「声を出して話すのはハードルが高い」という人も少なくありません。そこで、いろいろな参加の形を用意しておくことが大切です。
参加の形の例:
- 音声で話す(マイクON)
- チャットでコメントする
- スタンプ・リアクションで反応する
- 匿名の質問箱フォームから投稿する
PCユーザーはキーボード入力がしやすく、スマホユーザーはスタンプ・短文コメントが参加しやすい、などの違いもあります。「発言しなくても、スタンプだけでもOKです」「チャットだけの参加も歓迎です」といった一言を添えるだけでも、参加のハードルは下がります。
安心して使えるためのルールづくりとガバナンス
ハラスメント・NG行為の明文化
社内向けメタバースは「人が集まる場」なので、安心して使えるルールづくりが欠かせません。アバターを使うメタバースでは、見た目や動きの自由度が高い分、不快な行動が起きるリスクもゼロではありません。
そこで、あらかじめ以下を社内規程やガイドラインとして文章化し、メタバース内でも分かる場所(入口付近の掲示板など)に表示しておくと安心です。
- ハラスメント行為の禁止(言動・アバター表現など)
- 他者を不快にさせる行動のNG例
- 問題が起きた場合の相談窓口・対応フロー
録画・ログの扱いとプライバシー配慮
メタバースでは、イベントの録画やログ(チャット・行動履歴など)が残る場合があります。社員が安心して参加できるように、事前にルールを決めておきましょう。
整理しておきたい項目の例:
- 録画する/しないの基準(例:全社集会は録画、雑談会は録画しない など)
- 録画・ログの保存期間
- 閲覧できる人の範囲(管理部門・主催部署など)
- 利用目的(振り返り・研修素材・トラブル対応など)
また、録画を行う場合は、事前案内メールで明記し、当日も会場内で分かるように表示するなどの配慮をしておくと、参加者も安心して利用できます。
参加を「強制しない」ための運用ルール
せっかくの社内メタバースも、「また強制イベントか…」と感じられてしまうと、逆効果になることがあります。
- 参加必須のイベントと、任意参加のイベントを明確に分ける
- 任意イベントでは「参加しないこと」も尊重するメッセージを出す
- 苦手な人には、従来どおりオンライン会議やチャットでのフォローも用意する
目的は「メタバースに来させること」ではなく、「社員同士のつながりや社内コミュニケーションを良くすること」だという原点に立ち返って考えましょう。
社内への定着を進めるステップ
まずは小さな成功事例を作る
ここからは、「導入してみただけ」で終わらせないための、定着ステップを紹介します。いきなり全社展開を目指すのではなく、小さな成功体験から始めるのがおすすめです。
例えば、
- 1つの部署(または有志メンバー)だけで雑談会を試す
- 小規模な部活動(趣味コミュニティ)から始める
- 新人向けのウェルカムイベントをメタバースで実施してみる
このとき意識したいのは、「何人来たか」だけでなく、「参加者がどう感じたか」の声を集めること、そして良かった点・改善点を簡単にメモに残しておくことです。その小さな成功事例を社内で共有することで、「楽しそう」「ちょっと試してみたい」という空気や、「うちの部署でもやってみようか」という動きを生みやすくなります。
管理職・リーダー層をうまく巻き込む
社内メタバースを定着させるうえで、管理職・リーダー層の存在は欠かせません。
- 上司が参加していると、部下も安心して参加しやすい
- 逆に、管理職が全く関わらないと「遊びの場」と認識されてしまうこともあります
巻き込み方の一例:
- 最初にリーダー向けの説明会を開き、「目的」と「メリット」を共有する
- リーダー自身が登壇するイベント(対話会・相談会など)を企画する
- 成功事例の発表やコメントをリーダーから出してもらう
「トップダウンで押しつける」のではなく、リーダーに共犯者になってもらうイメージで関わってもらうと、うまくいきやすくなります。
アンケート結果から次の一歩を決める
イベントや常設スペースを運用したら、必ず簡単な振り返りを行いましょう。
アンケートで聞いておきたい質問の例:
- 今日のイベントを一言で表すと?
- 良かった点・楽しかった点は?
- 改善してほしい点・困った点は?
- 次にあったら参加したい企画は?
重要なのは、アンケート結果を「次の一歩」に変えることです。評判の良かった企画は頻度を増やす/別テーマでも試す、改善が必要な点は操作説明・時間帯・進行を見直す、要望は次回以降の企画案として検討する、といった形で活かしていきます。
「社員の声をちゃんと反映している」と伝わるほど、社内メタバースは自分たちの場として愛着を持ってもらいやすくなります。
よくある質問(FAQ)
ITリテラシーが高くない社員も多いのですが、大丈夫でしょうか?
はい、ただし最初の設計とサポートが重要です。
・ブラウザで入れるサービスを選ぶ
・入室〜基本操作までを1枚の図で説明する
・初回イベント前に「テスト入室」時間を作る
・当日はサポート役のスタッフを常駐させる
といった工夫で、多くの社員が不安なく参加できるようになります
オンライン会議ツールと何が違うのか、社内にどう説明すれば良いですか?
ポイントは、「会議の効率」ではなく、「場づくり」の違いにあります。
・会議ツール:目的のある話し合い・報告・決定
・社内メタバース:雑談・交流・社内文化づくり・体験共有
「オンライン会議の代わり」ではなく、「オンライン会議では代替しにくい部分を補う場」として説明すると、理解してもらいやすくなります。
メタバースを導入しても、誰も使ってくれないのでは…?
そのリスクはゼロではありませんが、小さく始めて成功事例を作ることで減らせます。
・有志メンバーでの雑談会や部活動からスタート
・新人向けオンボーディングなど、ニーズがはっきりある場での活用
・参加者の声を社内ニュースや社内SNSで共有
など、「楽しそう」「役に立っている」という空気を少しずつ広げていくことが大切です。
まず何から始めるのが良いですか?
おすすめの順番は、次のようなステップです。
1. 目的を一文で決める(例:「リモートメンバー同士の雑談の場をつくる」)
2. 小さな範囲(1部署・有志メンバーなど)で試す
3. アンケートで感想と改善点を集める
4. 良かった点・効果を社内に共有する
5. 少しずつ対象部署や企画の種類を広げていく
このように、「実験 → 学び → 改善」を繰り返す前提で始めると、失敗も次のステップにつなげやすくなります。
まとめ|メタバースを「会議の代わり」ではなく「つながりの場」にする
社内向けメタバースは、決して最新テクノロジーを使うためのツールではありません。
ここまで見てきたように、メタバース集客は空間を作ること、人を集めることのどちらか片方だけでは成り立ちません。
- リモート・ハイブリッド環境で失われがちな「雑談」「偶然の出会い」「部署を超えたつながり」を補う場
- 内定者・新入社員・リモートメンバーを含め、「みんなが同じ場にいる感覚」を共有するための器
として活用できるかどうかがポイントです。
そのために大切なのは、何のためにメタバースを使うのか(目的)、どんな場をつくりたいのか(体験設計)、どうやって続けていくのか(ルール・定着ステップ)を、社内の人たちと一緒に考えながら育てていく姿勢です。
メタバースは、「ここに集まろう」と決めた瞬間に、離れた場所で働くメンバー同士の共通の居場所になります。まずは小さな場からでかまいません。あなたの会社らしい「つながりの場」を、メタバースの中に少しずつ育てていってください。









