メタバースとは?|メタバースの全体像を徹底解説

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メタバース(Metaverse/Meta × Universe)とは、アバターで参加し、話す・学ぶ・体験する・買うを一体で行えるデジタル空間です。本記事では、メタバースの基礎概念からユースケース、事例、導入にあたってよくある失敗と回避策、将来性、FAQまでを体系的に整理して紹介します。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の企業・環境・状況への適用や効果を保証するものではありません。内容の利用は読者ご自身の判断と責任にてお願いいたします。参考としてご活用ください。

監修・執筆:UEL株式会社編集部

UEL株式会社のTechデザイン企画部と現場に精通した社内有識者が監修・執筆しています。

メタバースとは

メタバースとは、インターネット上に存在する仮想空間のことで、「みんなで集まれるデジタルな“場所”」です。自分自身の代わりになるアバターでその場所に入り、話す・学ぶ・遊ぶ・見学する・買うといったことを、ほかの人と同じ場で同時に行えます。同じ空間に“居合わせる”感覚がある点がメタバースの特徴で、世界はずっと動き続け(イベントの時間だけで消えない)、人がいなくても削除しない限り空間は残ります。

また、メタバースは特定の一つのサービス名ではなく、複数のプラットフォームやアプリの総体を指す概念です。メタバース空間には、PCやスマートフォンのアプリまたはブラウザから参加できます。VRやARデバイスでメタバース空間に入ることで、より没入感は高まります。

メタバースの主な特徴

  1. 空間(場所がある) — 画面の中に「部屋」や「街」のような3Dの場所があり、歩く・近づく・向きを変えるといった距離や方向の感覚があります
  2. 同時性(みんなで同時に体験) — 複数人が同時に入って会話や動きがリアルタイムで伝わるので、「その場に一緒にいる」感じになります
  3. 自己表現(自分らしさを出せる) — アバターや服・持ち物・部屋の飾りなどを変えて、自分らしさを表現できます
  4. 創作と参加(つくる人も、遊ぶ人も) — ユーザーや企業が部屋やイベントを作ることができ、ほかの人が参加したり、改良したりできます
  5. 経済活動(価値のやり取り) — デジタルアイテムの販売、チケットやサブスクなど、お金や価値をやり取りする仕組みがあります
  6. 相互運用性(将来の方向性) — 現在はそれぞれのサービス内で完結することが多く、仕様・権利・ID連携などの課題を解きながら、将来的には異なるサービス間でアバターやアイテム、実績が持ち運べるのが理想とされています

デバイスによる違い

メタバースはPCやスマートフォンだけでなく、ARデバイスやVRゴーグルなど、様々なデバイスで体験することができます。デバイスによるメタバース体験の違いを簡単にまとめました。

デバイスメタバース体験の特徴
PC/スマートフォンもっとも入りやすい入口。ブラウザやアプリからすぐ参加でき、特別な機材は不要です。社内外の利用でも導入ハードルが低いため、まずはここから始めるのが現実的です。
AR(拡張現実)現実の景色にデジタル情報を重ねる体験です。スマホや対応デバイスを通して、目の前の空間に案内表示やキャラクターが現れます。現実とメタバースの橋渡しがしやすいのが特長です。
VR(仮想現実)頭にかぶるヘッドセットで、仮想世界の中に入り込む体験です。空間が視界いっぱいに広がるので、臨場感は最高です。ただし、機材が必要で準備やコストがやや高め。

メタバースでできること

メタバースは「目的に合わせて使えるデジタルの“場所”のセット」です。
下の表は、どんな目的で、どんな使い方ができて、成功させるコツは何かを、初めての人にもわかるように整理したものです。

目的代表ユースケース主な業界
・部署
成功のコツ
集客・ブランディングバーチャル展示会、製品発表、コミュニティイベントマーケティング
広報
営業
来場の導線(LP・SNS・招待)を設計し、会場内で人同士が出会える仕掛けを用意。
指標:来場数、名刺交換数、発話回数、同席時間、共同操作数、CTAクリック(資料DL・問い合わせ)など。※滞在時間は放置でも伸びることがあるため、能動的な行動指標も併記する。
コミュニティ形成ファンミーティング、交流ラウンジエンタメ、ゲーム、D2C、SaaS定期イベント役割(モデレーター・ガイド)を設定。バッジや称号で参加意欲を継続。
指標:リピート率、常連比率、イベント参加数、UGC数、チャット/音声の参加者割合。
研修・教育オンボーディング、店舗/工場の疑似体験、プレゼン練習人事、教育、製造、小売反復練習できるシナリオ評価シートを用意。講師が同時に観察・フィードバックできる環境を整備。
指標:合格率、エラー率の低下、練習回数、フィードバック回数、受講後テストの向上。
コラボレーションリモート会議、空間ホワイトボード、3Dプロトタイピング企画、デザイン、R&D同じものを同じ場所で見る」前提で、3Dモデルや資料を会場に配置。同時編集レビュー動線を明確化。
指標:レビュー回数、合意までの時間、バージョン数、決定事項の数。
販売・ECバーチャルショップ、限定アイテム販売、試着・試用小売、ファッション、家電体験→購入の道筋を短く。決済・在庫・配送と現実側の仕組みをつなぐ。
指標:商品閲覧→カート→購入の転換率、平均滞在→購入までの時間、推薦クリック、購入単価。
採用・会社紹介バーチャル会社見学、座談会、技術ショーケース人事、採用広報企業文化が伝わる空間演出と、興味を持った人が面談へ進める導線を用意。
指標:参加者数、質疑応答数、座談会→面談の移行率、内定辞退率の改善。
地域・施設プロモーション観光地の再現、歴史展示、避難訓練の疑似体験自治体、教育、公共現地訪問の前後を補完。学習・体験→現地ビジットや申込へ次の行動につなげる。
指標:来場後の現地訪問率、アンケート満足度、学習到達度、寄付・申込の発生。

メタバースは「場所を作って終わり」では成功しません。
継続運用(イベント企画、コンテンツ更新、コミュニティ管理、効果測定と改善)で価値が育ちます。まずは小さく始めて指標を測る改善拡張の順で進めると、ムリなく成果が出せます。

メタバースのビジネス活用のポイント

メタバースをビジネスで活用する際のポイントとチェックリストを紹介します。

1.目的から逆算して「最小成功」パッケージを決める

  • 何をもって成功とするか(KGI/KPI)を最初に合意 —目標とする成功の定義を決定する
    例:来場数/資料DL数/商談化率/満足度 など
  • MVP(最小構成)で始める — まずは価値が伝わりやすい1テーマに絞る
    例:新製品の理解、研修の反復練習、採用説明会 など
  • 段階的なロードマップを用意 検証 → 改善 → 拡張 の順で広げる
    例:イベント実施 → 来場導線と会場導線を改善 → コミュニティ化/EC連携/ SSO・ID連携へ

チェックリスト

□ 成功指標(KGI/KPI)を文書化した
□ 能動指標(発話・共同操作・CTA等)を含めた
□ MVPの範囲と実施日を決めた
□ 検証→改善→拡張の3段ロードマップを作った

2.プラットフォーム選定の観点

  • 参加ハードルインストール不要/ブラウザ対応か、低スペックPCでも可
  • 同時接続・音声品質:想定するイベント規模・研修人数に耐えられるか
  • 制作のしやすさ:テンプレート、ノーコード編集、外部3Dデータ取込の可否
  • 運用・権限:モデレーション(荒らし対応)、ログ取得、アカウント管理が十分か
  • 外部連携:決済/EC/MA・CRM/SSOなど、実務で必要なシステムとつながるか

チェックリスト

□ ブラウザ入場が可能
□ 想定同時接続を満たすベンチマーク結果あり
□ ノーコードで当日修正ができる
□ モデレーション・ログ・権限の要件を満たす
□ 決済・EC・MA/CRM・SSOの連携方法を確認済み

3.コンテンツ&運用設計

  • 来場導線:Webサイト/SNS/メール/社内通知など複数ルートで案内
  • 空間設計:初めてでも迷わないよう、入口 → 目玉 → 回遊 → 退出/次アクションの看を配置
  • ファシリテーション:司会・ガイド・サポートを置き、話しかけるきっかけ質問の場を用意
  • 安全・ガバナンス:荒らし対策、録画・ログの扱い、著作権・肖像権を事前にルール化

チェックリスト

□ 招待~再来訪までの導線図がある(LP/リマインド/フォロー)
□ 会場内の看板・ガイド文・導線を配置した
□ 司会・ガイド・サポートの役割分担表がある
□ 録画・ログ・権利のポリシーを文書化した

4.計測と改善

  • 定量:来場者数、平均/中央値の滞在、発話・チャット数、ブース滞在時間、CTAクリック、CV(問い合わせ・購入・予約)
  • 定性:行動観察、退出理由のヒアリング、NPS(推奨度)
  • 改善サイクル:仮説設定→運用→振り返り(定量+定性)→改善

チェックリスト

□ ダッシュボード(定量)とメモ欄(定性)を用意
□ 次回までに直す点を3つ以内に絞って合意
□ ABテスト(導線・CTA・台本)の計画を立てた

5.まとめ

1.成功指標を先に決める(能動指標も見る)

2.MVPで小さく始める(まずは1テーマ)

3.参加しやすさ重視で選ぶ(ブラウザ・同時接続・運用・連携)

4.導線・案内・安全の運用設計を固める

5.測って直して、また試す(仮説→実施→改善のループ)

この順番で進めると、無理なく早く価値(Time to Value)を出しつつ、必要に応じて機能や連携を段階追加できます。

メタバースの将来性

メタバースは「ひとつの巨大アプリ」を指すというより、インターネット上の活動が“場所(空間)をともなって、同時に体験できる”方向へ広がっていく流れだと捉えると分かりやすいです。メタバースが今後どうなっていくのか、メタバースの将来性を考察します。

どんな方向に発展していく?

  • 働き方の“同じ場”化
    ただのオンライン会議から、同じオフィスに一緒にいる感覚
    離れた拠点でも、雑談・レビュー・デモ(ショー&テル)がその場でできる
  • お客さま体験の拡張
    WebサイトやECに、接客や会場の雰囲気が加わる
    見て終わりではなく、体験して理解してから買う流れが作れる
  • 学習・訓練の高度化
    マニュアルや動画だけでは身につきにくいことを、空間の中で動きながら学習
    安全教育や接客練習、発表のリハーサルなどに相性が良い
  • デジタル資産の価値が見える化
    アバターの服や記念バッジ、ワールド(会場)などがコミュニティの評価や思い出になる
    帰属意識を育てる
  • 相互運用性の前進(将来の理想)
    いろいろなサービス間でアバター・アイテム・実績が持ち運べると、体験が途切れず便利に

    ※いまは各サービスの中で完結することが多く、仕様・権利・ID連携の課題を一つずつ解きながら、段階的に進む見込みです

近い将来、現実的にどう使われていく?

  • まずはPC/スマホが主役
    特別な機材が不要で誰でも入りやすい入口としてPCやスマートフォンでのメタバース活用が普及
    必要になったらVR/ARで臨場感をあと乗せする形が現実的
  • 作る側のハードルが下がる
    ノーコード編集や生成AIの活用で、社内メンバーでも短期間で試作品(プロトタイプ)を作りやすくなる
  • 小さく始めて、大きく育てる
    目的に合わせた最小構成(MVP)でスタートし、効果が見えたら機能や規模を拡張
    例)まずは説明会だけ → 次に展示ブース追加 → 反応が良ければEC連携や採用イベントにも展開

よくある失敗と回避策

メタバース活用の際のありがちなつまずきを原因→具体的な回避アクションで整理しました。初めての人でも、この表を上から順にチェックすれば安全に進められます。

失敗パターンよくある原因回避策
作って終わり空間は作ったが、運用・更新の計画がない最初に3か月の運用計画を作る(企画カレンダー/毎月のイベント/KPIレビュー日程)。
成果指標は滞在時間だけに頼らず、発話回数・同席時間・共同操作数・CTAクリックのような能動的な行動指標も必ず入れる。
参加ハードルが高い
専用アプリ必須、アカウント発行が
まずはブラウザ入室可を前提にする。
ゲスト入場SSO(社内アカウント連携)に対応し、初回体験を軽くする。
招待~入室まで3ステップ以内を目標に。
目的があいまい導線・看板が不足、情報を詰め込みすぎKGI/KPIを定義する。
KGI/KPIを先に合意し、最初はMVP(最小構成)を1つに絞る(例:新製品理解、研修の反復練習など)。効果が出たら段階的に拡張
指標は能動指標(発話/同席/共同操作/CTA)も併記。
空間が“迷路”リモート会議、空間ホワイトボード、3Dプロトタイピング入口に「3ステップ看板」を作成する(①まずここへ ②次にこれを見る ③最後にこれをする)。目玉コンテンツは中央に配置。
案内係(モデレーター)を常駐させ、迷子をつくらない。
計測できないログやアンケートの設計が後回し事前にトラッキング(来場・発話・CTA等)とアンケートを埋め込む。
イベント後はダッシュボードで数値確認→次回改善点を3つ以内に決定
社内合意が弱いセキュリティ・法務・広報の検討不足。録画・ログ・名前表記のルール未整備早期に関係部門(情シス/法務/広報/人事)を巻き込む。
録画・チャットログの保持期間/閲覧権限/アバター名と社員IDの関連付け可否などを運用ガイドラインに明文化し、責任者を決める。

まずやるチェックリスト

□ 3か月運用計画(イベント・更新・KPIレビュー)を作成
□ 入室3ステップ&ゲスト/SSO対応を確認
□ KGI/KPIと能動指標(発話/同席/共同操作/CTA)を定義
□ 3ステップ看板と案内係を配置
□ 計測とアンケートを事前に実装
□ ガバナンス文書(保持期間・権限・表記ルール・責任者)を整備

「作ってからが本番」です。
小さく始めて測る→直す→また試すを回せば、確実に成果が積み上がります。

よくある質問(FAQ)

メタバース活用にはVR機材は必要ですか?

VR機材がなくても問題ありません。
PCやスマホのブラウザだけで入れるサービスが多く、まずはVRなしで十分に活用できます。必要になったら、体験を深めるため*VR/ARをあとから追加する進め方が現実的です。
(準備や費用をおさえやすく、効果も測りやすい)

どのくらいのコストや期間がかかりますか?

目的・規模・作り方で変わります。
テンプレートや既存の空間をカスタムすれば短期間で開始できます。最初は小さな試し(MVP)から始め、効果を見ながら段階的に投資するのがおすすめです。

何人まで同時に入れますか?

プラットフォーム次第です。
少人数の研修向けから、大規模イベントに対応するものまであります。
実施前に想定人数でのテストを行うと安心です。

セキュリティやコンプライアンスは大丈夫?

企業向けの機能を備えたサービスがあります。
例:入室制限、モデレーション(荒らし対策)、ログ取得、録画の管理など
あわせて、社内の運用ルールを明確にしましょう。
例:録画・チャットログの保存期間と閲覧権限、アバター名と社員IDを結びつけるか など

既存のWebサイトやECとどうつなげる?

複数の方法があります。
例:リンク導線、SSO(社内アカウント連携)、フォームやMA/CRM連携、決済連携など
来場 → 体験 → 申し込み・購入の流れを決め、計測して改善できるようにしておくと効果が出やすいです。

コンテンツ制作の難易度は?

下がりつつあります。
ノーコード編集やテンプレート、既存の3D素材を使えば、社内でも作りはじめられます。必要に応じて外部パートナーに土台づくりを頼み、運用しながら学ぶ方法も有効です。

BtoBでも効果はありますか?

あります。
複雑な製品の構造や運用の流れを空間で見せることで理解が深まり、商談の質が上がります。展示・説明・体験・相談を一体化できるのが強みです。

まとめ

メタバース(Metaverse/Meta × Universe)とは、インターネット上に存在する仮想空間のことで、「みんなで集まれるデジタルな“場所”」です。自分自身の代わりになるアバターでその場所に入り、話す・学ぶ・遊ぶ・見学する・買うといったことを、ほかの人と同じ場で同時に行えます。メタバースはPCやスマートフォンだけでなく、ARデバイスやVRゴーグルなど、様々なデバイスで体験することができ、目的に合わせて使い分けられています。メタバースがビジネスで活用されるケースも増加しており、小さく始めて測る→直す→また試すのサイクルを回すことがメタバース活用の成功のコツです。

最初は“狭く深く”。ひとつの価値提供に集中してMVPを走らせ、計測→改善→拡張で成果を積み上げる。これがメタバース活用を事業成果につなげる最短ルートです。