
株式会社駿河エンジニアリングは、樹脂成形金型の“フル3D設計の定着”と“設計変更に強い体制づくり”を目的に、3次元CAD/CAM/CAE「CADmeister」を導入。射出成形の実案件から立ち上げ、パラメトリック機能を用いたひな型設計により、設計工数10〜15%削減、成形機変更時の設計変更作業40%削減を実現しました。現在は設計部10名がフル3D設計を実践し、属人化の解消と品質の均一化を推進。CADmeisterを設計DXの基盤として、人材育成とリードタイム短縮を両立しています。
ソリッド化できない、設計変更に弱い3D設計が進まなかった理由

導入前の最大の課題は、フル3D設計を進めたくても、従来環境では「金型をソリッドで一気通貫に扱い切れない」点にありました。以前使用していたCADはサーフェス主体のモデリングに強みがある一方で、金型構造まで含めて完全にソリッド化するには手間がかかり、3D活用コマンドがあっても実務では使いこなしにくく、結果として設計スピードが上がりませんでした。干渉チェックや成形性検討を3Dで事前に行いたいという狙いはあるものの、断面図中心のやり方から抜け切れず、「3D設計が定着しない」という状況が続いていたと言います。
また、部品点数の多さもボトルネックでした。ユーザー部品を登録して運用していましたが、角度違いの部品が必要になると1度~15度で15個の部品として作る必要があり、結果として部品が増え過ぎ、800点近くに膨らんだこともありました。呼び出しも煩雑で、配置後の角度調整や長さ変更は手作業による配置調整が中心。寸法変更が入るたびに修正箇所を探して直すため、直し忘れなどのヒューマンエラーも起こりやすく、属人化した設計業務から脱却しにくい面がありました。
さらに、お客様の海外拠点対応が増え、「図面だけでは現地修正できない」「海外対応で3Dデータ必須」という要求が強まったことも転機でした。設計変更時に図面から3Dを起こし直すと、ほぼゼロからの作業となり、リードタイムが長い要因にもなっていました。こうした背景から、CAD/CAM連携を前提に、設計変更に強いパラメトリック設計で工数削減と標準化を実現できる環境が求められていました。
グループ内の実績から始まった、CADmeisterとの出会い

CADmeisterとの出会いは、グループ内での活用実績がきっかけでした。親会社であるマルスン株式会社をはじめ、すでにCADmeisterを使って金型設計を進めており、日頃から相談を重ねる中で「そろそろCADを見直すタイミングではないか」という話が自然と持ち上がったと言います。従来の環境ではフル3D設計の定着に限界を感じていたこともあり、次の一手として具体的な検討が始まりました。
初めてCADmeisterの提案を受けた際の第一印象は、「ソリッドに強そうだ」という点でした。これまでサーフェス主体で苦労してきた金型のソリッド化に対し、履歴ベースのソリッドモデリングやパラメトリック設計を前提とした思想が明確で、金型構造全体を3Dで扱える可能性を感じたそうです。冷却配管や押し出しピンなど、金型設計ならではの部品が標準機能として装備されており、「思っていた以上に機能がそろっている」という印象を持ちました。
また、単に形状を作るための3DCADではなく、ユーザー定義部品やExcel連携などを活用することで、設計を“仕組み”として回せそうだと感じた点も大きかったと言います。将来的にCAE解析まで見据えたCAD/CAM連携の考え方にも共感があり、「これは工数削減につながるかもしれない」という期待感が、導入検討を一気に前進させる後押しになりました。
フル3Dで金型設計を完結できるか ―採用の決め手
CADmeisterの採用にあたり、株式会社駿河エンジニアリングが最も重視したのは、金型設計をフル3Dで完結させられるかどうかという点でした。従来環境では、サーフェス主体の運用から脱却できず、金型全体をソリッドで定義し、設計変更に強いモデルを構築することが難しいという課題を抱えていました。そのため、単に3DCADとして使えるかではなく、ソリッドを活かした金型設計が実務レベルで成立するかが大きな判断基準となりました。
具体的には、履歴ベースのパラメトリック設計により、寸法変更や成形機変更に対してモデルが自動追従する点を高く評価しています。キャビ・コア、冷却配管、押し出しピン、スライドといった金型構造要素を3Dで一貫して扱え、干渉チェックや成形性検討を設計段階で行えることは、設計品質の安定化とヒューマンエラー削減につながると判断しました。
また、将来的な拡張性も重要なポイントでした。CAD/CAM連携を前提にしたCAM用モデリングのしやすさに加え、冷却解析や強度解析といったCAE解析まで見据え、3Dデータを起点に業務を完結できる環境が整っている点は大きな魅力でした。さらに、Excel連携やユーザー定義部品によるテンプレート化により、設計の標準化や属人化解消を図れることも決め手の一つです。最終的には、「設計結果として工数を削減できるか」という視点で評価し、その実現性の高さが決め手となりました。

株式会社駿河エンジニアリング 設計技術グループ 副次長 古屋 英一 様
フル3D設計の定着と設計変更に強い仕組みづくりを目指して
CADmeister導入にあたり、株式会社駿河エンジニアリングが目指した最大の目標は、金型設計をフル3Dで標準業務として定着させることでした。これまで断面図中心の2D設計やサーフェス主体の3D運用が混在しており、干渉や成形性の問題を後工程で修正するケースも少なくありませんでした。そこで、キャビ・コアをはじめとする金型構造全体を3DCAD上で一元管理し、設計段階で検討を完結させる体制への転換を明確なゴールに据えました。
あわせて重視したのが、設計変更に強い仕組みづくりです。自動車部品用金型では、成形機変更や仕様変更が発生することが前提となります。寸法変更のたびに手作業で修正するのではなく、パラメトリック設計により形状が自動追従するモデルを構築し、設計変更作業を大幅に削減することを目指しました。将来的に設計変更作業の削減や、全体の設計工数削減につながる運用を見据えていました。
さらに、属人化からの脱却と人材育成も重要なテーマでした。ユーザー定義部品やひな型設計、Excel連携を活用して設計をテンプレート化し、少人数設計でも安定した品質を確保できる環境を整えることを狙いました。最終的には、設計品質の均一化とリードタイム短縮を両立し、将来的なCAE解析や設計DXへとつながる基盤を築くことが、CADmeister導入時の大きな目標でした。
ひな型設計とExcel連携で実現した、フル3D設計定着へのステップ

株式会社駿河エンジニアリング 設計技術グループ リーダー 内田 将史 様
立ち上げ準備は内田様が担当となり進められ、最初は比較的シンプルで構造が複雑ではない射出成形(インジェクション)の新型案件を選定しました。納期のある実案件の中で、「まずは1型作ってみよう」と、フル3D設計に挑戦したことが大きな第一歩でした。
CADの操作を習得し、標準部品を整備するところから着手し、立ち上げ期間としては1年半を要しました。最初は検証を重ね、「この操作をするとどうなるのか」を一つずつ確認するところから始まりました。ルールや特性を理解したうえで、「こうしたほうが分かりやすい」「こうすればミスが減る」と工夫を重ね、さらに「他の人に使ってもらうには、どのように運用すればよいのか」を考えながら、設計手順を一つひとつ固めていったと言います。
準備期間で特に印象に残っているのは、設計を“仕組み化”するための試行錯誤です。CADmeisterのアセンブリ構造は、従来のCADとは考え方が異なり、最初は戸惑いもありました。しかし、使い込む中で履歴ベースモデリングやパラメトリック設計の特性を理解し、「ここに配置すれば、あとは動かすだけ」という運用を目指してひな型設計を整備していきました。
もう一つの大きな取り組みが、Excel連携とVBAによるユーザー定義部品の整備です。標準機能だけでは実現できない自動寸法変更や条件切り替えを実現するため、市販のテキストでVBAを学びながら、寸法マスターをExcelで管理し、CAD側へ自動反映する仕組みを構築しました。こうした準備を経て、フル3D設計が現実的な運用として回り始めたことが、大きな成果につながっています。
フル3D設計10名体制へ ―設計工数15%削減、設計変更工数40%削減
CADmeister導入の成果は、設計工数や品質の改善にとどまらず、設計体制そのものを進化させた点にあります。
1型目では試行錯誤もありましたが、2型目から「少し先が見えてきた」「これならいけそうだ」という手応えを実感できるようになりました。ひな型設計やパラメトリック設計が機能し始め、寸法変更や配置調整に対してモデルが自動追従することで、設計変更作業の負担が大きく軽減されました。現在では設計では約15%の工数削減ができていいます。成形機変更に伴う設計変更では作業工数を40%削減できていると感じています。条件次第では、従来30分以上かかっていた作業がボタン一つで30秒程度で完了するケースもあります。
数値以上に大きな成果は、設計品質の安定と向上です。キャビ・コア、冷却配管、押し出しピン、スライドなどの金型構造を3Dで一元管理できるようになり、干渉チェックや成形性検討を設計段階で完結できるようになりました。「試せる設計」が可能になったことで検討の幅が広がり、直し忘れなどのヒューマンエラーも大幅に減少しています。

体制面での転機となったのは、ひな型が完成し、必要な材料がそろったことでした。ユーザー定義部品やExcel連携用の表など、設計を支える仕組みが整った段階で、まず設計者を一人増やし、その人にメインでCADmeisterを使ってもらい、内田さんはサポート側に回る体制に移行しました。自分が構築した設計手順で初心者の方が設計することで、「どこでつまずくか」「どこを改善すべきか」が明確になります。トラブル対応や不足部品の追加を行いながら進めることで、改善と展開を同時に進めることができました。
増員の判断は、1か月半〜2か月程度の案件サイクルという仕事の区切りに合わせ、次のステップへと進めていきました。その結果、現在では設計部10名がCADmeisterを使ってフル3D設計を行う体制が確立しています。CADmeisterは、個人のスキルに依存しない設計を実現しています。
また、データ交換時に発生するエラーを自動修正できるヒーリングSPを活用することで、データ修正にかかっていた工数を従来の約3時間から約0.5時間へと大幅に短縮できています。これにより、設計着手の遅れや修正工数を抑えられるようになり、業務全体の効率化につながっていると実感しています。

CADmeisterを「操作するCAD」から「設計を支える基盤」へ
CADmeisterの運用開始後に直面した課題は、単なる操作習得ではなく、『CADmeisterの特性を活かした最適な使い方をどう設計業務に落とし込むか』という点でした。内田さんは他社CADでの豊富な経験を持っていましたが、その視点があったからこそ、CADmeisterを「従来の延長で使う」のではなく、「どう使えば設計がもっと楽になり、ミスが減るか」を意識した工夫が始まりました。
特に注力したのが、ツリー構造を前提とした運用設計です。CADmeisterでは、部品同士の関係性を構造として持てることが大きな特長です。この特性を活かし、部品の配置ルールやファイル構成を整理することで、同じ部品ごとにオブジェクトが自動的に整理される仕組みを構築しました。「この位置に配置すれば、あとは動かすだけ」という状態を目指し、設計者が迷わず作業できるひな型データとExcel連携表を整備しています。結果として、設計手順そのものが標準化され、説明に頼らなくても自然と正しいモデルが出来上がる環境が整いました。
こうした取り組みを通じて、CADmeisterは「操作を覚えるCAD」から「設計の考え方を支える基盤」へと進化しました。ツールの特性を理解し、工夫次第で設計品質と効率を大きく高められる点こそが、CADmeisterを使い続ける価値となっています。

仕組み化された設計と、同業とのつながりが生む前向きな変化
特に価値を実感しているのが、履歴ベースのパラメトリック設計です。寸法変更や成形機変更が発生しても、関連形状が自動で追従するため、手作業による修正や直し忘れが大幅に減りました。設計変更に対する心理的な負担が軽くなり、「まず試してみる」という設計スタイルが実現しました。ボタン一つで角度変更が可能で、1回の変形も約30秒で完了します。その結果、検討回数が増え、設計品質の向上にもつながっています。
ひな型設計やユーザー定義部品、Excel連携を組み合わせることで、設計をテンプレート化しやすい点も大きな価値です。ベテランのノウハウを“仕組み”として残せるため、属人化を防ぎ、少人数でも安定した品質を確保できます。
また、CADmeisterユーザーを対象とした技術交流会などのイベントを通じて、同業他社の方々と情報交換できる点も魅力です。懇親会で実際に顔を合わせ、悩みや工夫を共有することで、「自社だけではない」と感じられ、前向きな刺激や励みを得られる貴重な機会になっています。

繰り返し設計・設計変更が多い現場ほど効果を発揮
CADmeisterは、特に似たような金型設計業務を繰り返し行っている企業にフィットするツールだと考えています。自動車部品用金型のように、基本構造は共通しつつも、寸法違いや成形機違い、仕様変更が頻繁に発生する現場では、その強みが最大限に発揮されます。設計変更のたびに手作業で修正を重ねている企業にとっては、業務の進め方そのものを変えるきっかけになるでしょう。
また、3D設計を定着させたいが、思うように成果が出ていない企業にも適しています。サーフェス主体の運用から抜け切れず、ソリッドを十分に活かせていない場合でも、CADmeisterは履歴ベースのパラメトリック設計を前提としているため、変更に強い3Dモデルを構築しやすい点が特長です。干渉チェックや成立性検討を設計段階で行えるようになり、後戻りやミスを減らすことができます。
さらに、属人化や人材不足に課題を感じている企業にも向いているのではないでしょうか。ひな型設計やユーザー定義部品、Excel連携を活用することで、ベテランのノウハウを設計の仕組みとして残せるため、経験の浅い設計者でも一定水準の設計が可能になります。少人数設計でも品質を落とさず、教育コストを抑えながら設計DXを進めたい企業にとって、CADmeisterは有効な選択肢になると考えています。
ツール導入で終わらない、営業・SE・サポートとの連携
CADmeisterの導入から運用に至るまで、営業やSE、コールセンターとのコミュニケーションは非常にスムーズだと感じています。特に印象的なのは、単なる問い合わせ対応にとどまらず、現場の状況を理解したうえで寄り添ってくれる姿勢です。立ち上げ初期から担当のSEが定期的に足を運び、設計の進め方や課題を共有できたことで、「何を目指しているのか」「どこでつまずいているのか」を共通認識として持てた点は大きな安心材料でした。
運用中に出てくる疑問については、コールセンターが対応してくれますし、複雑な運用や自社独自の使い方に関する相談は、顔の見える営業やSEに直接相談できる体制もあり助かっています。設計現場の背景を理解したうえで回答をもらえるため、やり取りに無駄がなく、次の改善につながりやすいと感じています。
また、こちらからの要望や改善提案にも前向きで、「どうすればもっと使いやすくなるか」を一緒に考えてもらえる関係性が築けています。CADmeisterはツール単体ではなく、人のサポートを含めて初めて価値を発揮するシステムだと実感しており、安心して長く使い続けられるパートナーだと考えています。

UEL株式会社 営業統括本部 中日本営業部 市村 健多
フル3D設計のその先へ──設計DXを加速させる展望
株式会社駿河エンジニアリングが描く今後の展望の中心にあるのは、人材育成と設計力の底上げを両立させることです。CADmeisterを導入し、ひな型設計やパラメトリック設計を整備してきたことで、設計を「個人の経験」に依存させない土台が見えてきました。今後は、この仕組みをさらに磨き込み、経験の浅い設計者でも一定水準の判断や設計ができる環境を整えていきたいと考えています。
あわせて注力したいのが、設計スピードとリードタイムのさらなる短縮です。現在も設計工数の削減効果は出ていますが、納期に対して設計にかけられる時間は依然として厳しく、作業の分業や自動化を含めた工程全体の見直しが必要だと感じています。CADmeisterのExcel連携やユーザー定義部品をさらに活用し、「設計者が考えるべき部分」に集中できる環境を目指します。
将来的には、今以上にCAE解析を設計工程に組み込むことも重要なテーマです。冷却や押し出しといったこれまで経験に頼ってきた領域を解析で補完し、設計の根拠を可視化することで、品質の安定化や過剰設計の抑制につなげたいと考えています。解析技術を使って「安心・安全」の根拠を示せるようになれば、金型のコンパクト化、軽量化、そしてコストダウンにつなげることができ、お客様への提案をより良いものにしていくことができます。
また、設計ノウハウをAIに学習させて自動化し、設計経験が少なくても熟練者と同じ時間で設計できるよう、さらに進化させていきたいと考えています。CADmeisterを軸に設計DXを一歩ずつ進め、少人数でも強い設計組織をつくることが、同社の今後の大きな目標です。







