2024年9月10日公開
株式会社エイチワンは、金型設計自動化ならびにダイレイアウト設計の3D化に挑戦している。 取り組みの結果、金型設計工数削減を実現した。 特にモデリング作業においては1年目設計者、4年目設計者ともに大幅削減となり効果を確認している。
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株式会社エイチワンは自動車車体フレームの開発・生産を主力事業とし、国内外にネットワークを広げ、グローバルな供給体制を確立している企業である。
自動車メーカーと共同で車体フレーム研究開発を行うところから始まり、そこで作成された設計データをもとに開発領域内でデジタルエンジニアリングを駆使することで、高精度な金型の製作と効率的な溶接ラインの構築を行っている。
また、生産領域おいては、独自の生産管理システムのもとに、安定的かつ効率的な量産を行っており、研究開発から量産までの自社一貫体制を確立している。
課題は金型設計のスキルレベルによるQ・C・Dのばらつき
エイチワンでは金型設計に求められる要素「Q・C・D」が設計担当者のスキルレベルによってばらつきが生じてしまうという課題があった。
構造設計は、国内では入社1〜3年目の新人設計者が担当しており、海外では設計者の入れ替わりが早く定着率が低い状況で、どちらも設計経験の浅い設計者が担当していた。
そのため、ベテラン設計者と比較すると不具合が多く、設計にも時間がかかっていた。
対策としてOJT等の教育によりスキルアップを図ってきたが効果が上がらず、設計者のスキルに頼らずに「Q・C・D」を満たすために、金型の自動設計に挑戦することになった。
システムの選定にあたっては、金型設計専用機能が開発され続けていること、Excelからコマンドを実行できるExcel連携機能があることからCADmeisterが選定された。
金型自動設計と3Dダイレイアウト設計により工数を最大70%削減
最初の取り組みとして、設計者の作業工数分析を行った。
その結果、作業全体のうち構造検討が2割、モデリングが4割を占めていることが判明した。
構造検討は金型構造や工程への理解度が影響し、モデリングはCAD操作の習熟度や理解度によって工数と作業時間に影響する。
それを踏まえて金型自動設計システム開発のコンセプト(以下3点)を定義した。
・設計者が条件に合った設定を 「正しく」・「迷わず」 選べる仕組みにする。
・スキルに依存せずに、少ない手数でモデリングできる仕組みにする。
・設計ノウハウを” 人 ”ではなく” システム ”に蓄積できるようにする。
金型自動設計においては、“Excelをユーザーインターフェースとした設計ナビゲーションシステム構築”と“Excel VBAをベースとしたモデリング作業の自動化”を行った。
自動化の部分では、ChatGPTをVBAプログラミングに活用することで、プログラミング工数を6割削減することができた。
「Excel連携という機能がある時点でVBAプログラミングを活用すれば、上手く制御できるのではないかとの発想はあったのですが、プログラマーではない私たちは、その知識をどう補完すればよいか考えていました。その結果、ChatGPTにたどりつきました。」(亀井氏)
金型領域の3Dデータ活用が進むと、ダイレイアウト設計だけが2Dで取り残されている状況になっていた。
そこで、CADmeisterの新機能として3Dダイレイアウトがリリースされたのを機に3D化にも取り組むことになった。
「DL領域で型の構造を作り込んでいくことで検討精度をあげて、後工程の金型設計工数を下げたいという思いがありました。現在はダイレイアウト図を3Dで仕上げると、金型設計者は担当する工程のデータを取り込み、そのまま設計に利用しています。」(近藤氏)
金型設計システム環境と使用ツール
現時点での実績は、従来の1年目設計者の工数を100%として比較すると、4年目設計者が最大70%減、1年目設計者が最大56%減となり、特にモデリング作業において大きな効果が認められた。
金型設計工数の削減率比較
構造検討作業・モデリング作業の完全自動化に向けて
金型設計規格の基準や計算結果で決まるものは、しきい値方式として自動化ロジックの構築と数値化を進める。 一方で設計者の経験・ノウハウで決まるものはAI技術の活用を模索する予定である。 DL領域の自動設計も拡大していき、さらなる金型設計との連携を目指す。
2024年2月取材
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