2021年4月23日公開
フル3D設計の定着により、全体作業時間を約5割削減することに成功した。
さらなる効率化として取り組んでいる自動設計化や図面レスについても紹介する。
株式会社協和精機製作所は創業以来、自動車、OA・AV機器、デジタル家電、医療、介護など超精密部品を生み出す金型製作にたずさわってきた。金型製作可能重量は10トン、成形機は1300トンまで対応している。
近年は汎用型だけでなく、特殊金型にも取り組んでおり、0.001mm以下のナノ加工による光学系部品・自動車ランプ周りの金型・レンズ関連の金型、ピアノブラック鏡面#14000の高転写性でウエルドレスを実現するヒート&クール金型、フィルム金型や金属インサート金型に多くの実績を持つ。
2014年、2018年に経営革新承認取得、2017年には兵庫県成長期待企業に選定され、総合金型メーカーとしてより付加価値の高い製品づくりを目指している。
ナノ加工磨きレス製品
成形品
金型の構造が複雑になればなるほど干渉や設計ミスが多発
問題解決のためにフル3D設計の導入にチャンレジ
2016年までの金型製作では、構想設計は2D設計、マシニング加工は必要な部分だけ3D加工を行っていた。
当時は難易度の高い金型になると、構想設計はAさん、製品部3D設計はBさん、プレート図はCさんといったように設計工程を分割して、数名がかりで設計データを仕上げていくスタイルだった。
構想設計ではいくつもの断面を2次元に落とし込んで進めるため、干渉が発生しないよう多くの時間をかけて検討する。
それでもなお、傾斜スライドの斜め穴同士の足元等が干渉してしまうことがあり、その対応に時間がかかっていた。
また、アセンブリ図面は視認性が悪いため、いざ部品図に展開すると干渉や不成立の問題に気づくことも多い。 その時点で設計変更をすると、すでに形状加工を進めている製品部と整合性がとれず、部品の作り直しや溶接作業が発生する場合があった。
部品表作成は図面の寸法や記号を目視で確認し、部品表ファイルに手入力していたため、ミスが多く問題となっていた。
これらの問題を解決するために、フル3D設計に取り組むことを決めた。 この決定に伴い3次元CAD/CAMの見直しを図ったが、結果として、長年使用してきたCADmeisterを継続することに決めた。 ポイントは3つある。
フル3D設計実現により、全体作業時間を約5割削減
小暮氏に3D設計取り組み当初についてうかがった。
「はじめにCADmeisterのモールド金型向けフル3D設計コースを受講しました。
その後、すぐに取り組みたかったのですが、当時はベテラン設計者が少なかったこともあり、設計と外注管理を何型も担当していたので目の前の業務に追われて数ヶ月が経過してしまいました。
納期に余裕があって比較的簡単な型から始めたかったのですが、タイミング良くそのような型の仕事が来ることはなく、これではまずいと思い、次の金型で3D設計をすると腹を決めました。
その通りに実行したのですが、実はその型が構想図承認まで何度もやりとりが続くほど複雑な仕様で大変苦労しました。
でも、そのおかげで次が楽になり、今では3D設計のほうが設計しやすくなりました。」
社内に3D設計を展開するために、主に2つ取り組みを行った。
1つ目は雛形モデルの整備である。
「雛形モデルは必需品です。
部品データを一からモデリングすることもできるのですが、昨今の納期の厳しさから時間をかけずに3D設計をスタートさせたかったので、ミスミなど規格品の雛形モデルを購入しました。
それを自社あるいは顧客の設計標準にアレンジして使っています。
雛形モデルには履歴があるので設計変更にも対応できるのが便利です。」
2つ目は全設計者向けにフル3D設計の社内セミナーを実施した。
小暮氏が業務で作成した実データを見せて、同じ手順で参加メンバーが操作をする。
ノウハウをもとに指導にあたり、現在では全設計者がフル3D設計を行っている。
3D設計は視認性が高いので、構造物の干渉が早期解決できるようになった。
さらに、部品表も3D設計データの寸法や記号をもとに専用機能で自動作成できるようになった。
複数名で取り組んでいた難易度の高い金型も、1名で設計できるようになり検討時間短縮と図面レスを実現した。
現在は加工現場での3D活用にも取り組んでいる。
フル3D設計の実現による工数削減効果は、構想設計3割減、2D図面作業8割減、部品表作成8割減、設計ミス対応3割減。
全体で作業時間を約5割削減することができた。
顧客仕様を盛り込んだ金型の自動設計や
3Dデータを穴あけ加工に連携させて図面レスを実現する
現在さらなる取り組みとして、金型の自動設計化と完全図面レスの実現を進めている。
金型の自動設計化ではCADmeisterのExcel連携機能を活用している。
これはMicrosoft office ExcelとCADmeisterを連携させる機能で、CADmeister上の数値(寸法値など)をExcelのセルに読み込んだり、Excel上の数値にCADmeisterの3Dモデルを変形したりすることができる。
例えば、お客様ごとの仕様をExcelファイルに設定しておき、成形品サイズをExcelに入力すると、それに合わせて金型の各寸法が決定し、雛形データを自動変形させることができる。
雛形データとお客様仕様を設定したExcelファイル
穴あけ加工への連携は、3Dデータの穴の色をシステムが自動認識し、色ごとに穴加工の工程を割り当てたNC出力が可能である。
これが実運用できると加工用の図面が不要になり、完全な図面レスが実現する。
穴あけ加工への連携
新しい取り組みに挑戦し続ける小暮氏は語ります。
「設計から加工に至るまでの全工程で3Dデータを活用することが効率化につながります。
CAD/CAM一気通貫が可能なCADmeisterだからこそできることですし、ここまでやりきるには管理者の意識改革が非常に重要だと思います。」
2021年3月取材
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