RoHS指令は電気電子機器に含まれる特定有害物質を「均質材料」単位で制限する製品規制です。
REACH規則は化学物質の管理を目的とした包括的な制度であり、電気電子機器では主に成形品(article)としてのSVHC情報提供義務が実務上の中心となります。
なお、一定の条件を満たす場合には、成形品に含まれるSVHCについてECHAへの通知(REACH第7条(2))が必要となることがありますが、これはSVHC含有率のみで自動的に発生する義務ではありません。具体的には、成形品中のSVHC濃度が0.1wt%を超え、かつ当該SVHCの事業者あたりの総量が年間1トンを超える場合に検討対象となります。ただし、当該用途について既にREACH登録が行われている場合や、通常または合理的に予見可能な使用(廃棄を含む)において人または環境への暴露を除外できる場合には、通知義務は発生しません。
付属書XVIIに基づく用途別の制限は、成形品にも適用される場合があるため、別途確認が必要です。
なお、本記事は、RoHS指令およびREACH規則に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の製品、取引、または個別案件に対する法的助言を構成するものではありません。実際の対応にあたっては、関係法令および最新の公式ガイダンスを確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。

監修・執筆:UEL株式会社編集部
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目次
電気電子機器における違いを一文で
電気電子機器において、RoHSは製品そのものの適合性を問う規制であり、REACHは製品に含まれる物質情報の管理と伝達を求める規則です。実務上は、多くの電気電子機器において「RoHS適合を軸としつつ、REACHの情報義務や制限該当性を並行して確認する」という整理が最も現実的です。
前提整理|REACH規則は本来どこまでを対象としているか
REACH規則の本来の枠組み
REACH規則は、EU域内で使用される化学物質のリスクを把握し、適切に管理することを目的とした包括的な制度です。電気電子機器向けの規制ではなく、あくまで「化学物質」を起点に設計されています。REACHでは、製品を次の3つに区分して扱います。
- 物質
- 混合物
- 成形品
重要なのは、この区分ごとに課される義務の内容が明確に異なる点です。電気電子機器の実務判断では、この前提を外すと比較が成立しません。
なぜ「電気電子機器」に対象を絞って比較するのか
電気電子機器はREACH規則上、一般に複数の成形品(article)から構成される「複合製品(complex object)」として扱われます。
SVHCの0.1wt%判定および情報提供義務は、完成品全体ではなく、構成要素ごとの成形品単位で行う必要があります。これは、EU司法裁判所(CJEU)の判決により、複数の成形品から構成される製品についても、各成形品単位で判定すべきと整理された考え方に基づくものです。成形品とは、化学組成よりも形状や機能が使用目的を決定づける製品を指します。
REACHにおける「物質登録」や、混合物として供給される化学製品に関するSDS提供義務、成分物質のREACH/CLP対応といった論点は、成形品のみをEUに供給し、物質や混合物をEUへ輸入・供給しない場合には、通常は該当しないことが多い論点です。ですが、成形品としてのSVHC情報提供義務やSCIP対応は引き続き重要な義務であり、実務上の対応負荷が小さいわけではありません。
また、接着剤・塗料・洗浄剤等を混合物としてEUに輸入・供給する場合や、EU域内で製造を行う場合には、成形品以外のREACH義務が発生する可能性があります。
RoHSとの違いを整理する際は、電気電子機器では成形品として課されるREACH義務(SVHC情報提供等)を中心に比較するのが実務的です。ただし、REACH付属書XVIIに基づく用途別の制限は、成形品にも適用される場合があるため、RoHSとの比較とは切り分けて、別途確認が必要です。
比較の前提|電気電子機器に関係するRoHSとREACHの位置づけ
RoHS指令は、電気電子機器を明確に対象とし、有害物質の含有を制限する直接的な製品規制です。一方、REACH規則は電気電子機器の直接の製品規制ではなく、含まれる物質情報の管理を通じて間接的に電気電子機器にも影響します。
このため、「どちらが上位か」「どちらが厳しいか」という比較は適切ではありません。
両者は役割の異なる規制であり、実務では併存を前提に理解する必要があります。
電気電子機器におけるRoHS指令とREACH規則の比較
比較表|5つの軸で整理
| 比較軸 | RoHS指令 | REACH規則 |
| 規制の目的 | 特定有害物質の「排除(不使用)」 | 含有物質の「把握(管理)と透明性(情報開示)」 |
| 規制対象 | 電すべての電気電子機器(医療機器・産業機器なども含む) | 全ての成形品・混合物・化学品 |
| 判定単位 | 均質材料(Homogeneous Material)中の含有率 | 成形品(First Article)での物質重量パーセント(w/w%) |
| 実務の主戦場 | 適合性の証明(品質保証・調達・設計) ・不使用証明書の回収・検証 ・分析データの管理、技術文書の整備 | データのライフサイクル管理(環境管理・設計・調達) ・SVHC追加への定期調査(年2回) ・SCIP登録 |
| リスクの性質 | 「一発アウト」の法違反 (含有=即、回収・罰則リスク) | 「伝達漏れ」によるコンプライアンス事故 (含有そのものは禁止ではない) |
RoHSは設計段階での材料選定が中心となり、REACHは情報収集と伝達の体制構築が主な課題になります。
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完成品メーカー(OEM・ODM)
完成品メーカーは、RoHS指令において製品全体の適合責任を負います。
均質材料単位での含有制限を満たしているかを確認し、技術文書として証明できる状態が求められます。
REACH規則では、EUで成形品を供給する者に対し、成形品にSVHCが0.1wt%を超えて含まれる場合、取引先(受領者)に対しては要求の有無にかかわらず情報提供義務が発生します。EU域外のサプライヤーであっても、EU側の供給者がこの義務を履行できるよう、同等の情報提供を求められるのが実務上一般的です。
さらに、EU市場に成形品を上市する供給者(EU域内の製造者・輸入者等)は、SVHCが0.1wt%を超える場合、廃棄物枠組み指令(WFD)に基づきSCIPデータベースへの情報提出が求められます。実務上はEU域内の製造者や輸入者が主な提出主体となりますが、サプライチェーン上の供給者として義務が及ぶかどうかは、具体的な取引形態に応じて確認が必要です。
一方、EU域外のサプライヤーは直接の提出主体とはならないのが通常ですが、EU側の義務履行のために、取引上、必要な情報提供を求められる点に注意が必要です。また、消費者から請求があった場合には、45日以内に情報提供を行う必要があります。
両規制を同時に管理するためには、部品構成と化学物質情報を紐づけて把握する体制が不可欠です。
部品・ユニットサプライヤー
部品サプライヤーは、RoHS適合を示すために含有禁止物質が基準値以下であることを証明するための情報提供を求められます。これは多くの場合、上位メーカーの設計・品質判断の前提資料として使用されます。
一方、REACHではSVHC含有有無および該当する場合の情報を、上位メーカーに対して提供する役割が主となります。「RoHS対応済み=REACHも問題なし」と誤解されやすい点が、実務上の認識ズレとして頻発します。
材料・化学品メーカーとの関係
電気電子機器メーカーがREACH対応を行う際、SVHC情報の多くは材料メーカーからの情報に依存します。情報が更新されない、または不十分な場合、法令違反ではなくても顧客対応上のリスクが生じます。このため、グリーン調達基準を定め、契約や調達仕様の中で、情報提供範囲を明確にすることが重要です。
完成品メーカーも部品・ユニットメーカーもRoHS指令/REACH規則のための情報伝達を「chemSHERPA」の活用することで効率化・省力化が可能になります。chemSHERPAでは、RoHS指令で規制されている物質情報(使用量、使用されている場合は、適用除外用途の宣言)も、REACH規則に該当する物質情報とその量なども合わせて報告することができます。
よくある混同と誤解(電気電子機器視点で整理)
REACHは含有禁止を原則とする規制ではありません。SVHCが含まれていても、REACH規則上は情報提供等を前提に一定条件下では流通が可能ですが、REACH付属書XVIIによる用途別の制限は、成形品にも直接適用される場合があります。また、付属書XIV(認可対象物質)は、主としてEU域内で当該物質を使用する事業者(製造工程での使用や成形品への組み込み等)に影響し、成形品として完成した電気電子機器の流通可否はケースごとに判断されます。また、RoHS対応をしていてもREACHの情報義務が免除されるわけではありません。
REACH規則でも、実は付属書XVIIに収載される「制限物質」というものがあり厳密にはSVHC情報の伝達以外でもREACH規則への対応が必要になることもあります。制限物質はほとんどが混合物、化学品が対象ですが、成形品も対象となる場合もあります。
付属書XVIIは物質ごとに「どのような用途で、どの程度の濃度まで許容されるか」が個別に定義されています。
- 用途の確認: 全ての成形品で禁止されているのか、それとも特定の用途(例:皮膚に直接触れるもの、子供向け製品など)に限定されているのかを確認します。
- 閾値(しきい値)の確認: 物質によりますが、「0.1%未満であればOK」というものもあれば、「検出されてはならない」という厳しいものもあります。
両規制で用いられる「0.1%」という数値も、判定単位と意味が異なります。SVHCが0.1wt%を超えても、直ちに販売禁止となるわけではない点は、実務上特に注意が必要です。
どちらを先に対応すべきか?|実務判断フロー
判断の軸は3つ
実務判断では、自社の立場が完成品メーカーか部品サプライヤーか、EU向け出荷の有無、そしてサプライチェーンから取得できる化学物質情報の整備状況が重要な判断軸となります。
RoHSは製品上市の前提条件となるため、優先度は常に高くなります。REACHは情報対応の成熟度によって段階的な対応が可能です。
簡易チェックリスト(実務用)
- EU向け電気電子機器か
- RoHS適合を技術文書で説明できるか
- SVHC情報を部品単位で把握しているか
よくある質問(FAQ)
RoHSとREACHはどちらが厳しい?
目的が異なるため、単純比較はできません。
電気電子機器ではREACH登録が必要?
通常、成形品としての電気電子機器そのものにREACHの登録義務はありません。ただし、通常使用条件下で物質を意図的に放出する設計の場合には、例外的に登録義務が問題となることがあります。
両方対応しないとEUに出せない?
RoHSは適用範囲に該当する電気電子機器では原則として必須(ただし、適用除外や用途別の免除が設けられている場合があります)であり、REACHについては主に情報義務等への対応が求められます。
SVHC情報はどこまで確認すべき?
サプライチェーン全体で、構成要素ごとの成形品単位で0.1wt%判定ができるレベルが望まれます。
まとめ
RoHSは電気電子機器の製品適合を問う規制です。REACHは化学物質情報の管理と伝達を求める規則です。電気電子機器では、両者を対立させず、役割分担として理解することが最短ルートとなります。
本記事は、RoHS指令およびREACH規則に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の製品、取引、または個別案件に対する法的助言を構成するものではありません。実際の対応にあたっては、関係法令および最新の公式ガイダンスを確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。





