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ソリューション

Profile

国立大学法人 名古屋工業大学
所在地:愛知県名古屋市昭和区御器所町

  国立大学法人 名古屋工業大学 社会工学科経営システム分野
教授 橋本 芳宏 様
  橋本研究室 社会工学専攻 博士課程

県立名古屋盲学校 高等部理療科
教諭 細川 陽一 様
  技術部 情報解析技術課
技術専門職員 石丸 宏一 様
  技術部 装置開発課
技術専門職員 萩 達也 様

研究室紹介

名古屋工業大学の橋本研究室では、「視覚障害者に対する学習支援システムの開発」を主要なテーマの一つとして研究に取り組んでいます。
今回は、「視覚障害者に対する学習支援システムの開発」でPOLYGONALmeisterを活用いただいた事例について取材させていただきました。
取材当日は橋本教授はご不在でしたが、教材開発に携わっている萩様、石丸様、県立名古屋盲学校の細川先生にお話しを伺いました。


模型製作で利用したマシニングセンター

取組の背景

平成23年8月に改正された障害者基本法では、教育の条文である第16条において、 国及び地方公共団体における障害者の教育に関する環境整備の一つとして、新たに「適切な教材等の提供」が追加されています。
この改正を請けた、文部科学省の「障害のある児童生徒の教材の充実に関する検討会」では、 障害のある児童生徒がその能力を最大限発揮するための教材や指導方法の開発・普及を進めることが提言されています。

教材紹介

― 細川先生も視覚障害をお持ちだとお聞きしました。

20年前に緑内障が悪化して視力を失ってしまいました。 視力がなくても楽しいことがたくさんあると徐々に思えるようになりました。 私とおなじ視覚障害を持っている方が十分力を発揮できるような社会を作りたいと考え、橋本教授の研究に参加しています。

― 視覚障害者の方向けの教材とは、どのような教材を作られたのでしょうか

地形図を題材にしようと考えました。 地理の授業で健常者は等高線図や色分けで平野や山岳部を認識できるのですが、視覚障害者にはとても難しいのです。 幸いに国土地理院から県別で3次元のSTLデータが提供されています。
http://cyberjapandata.gsi.go.jp/3d/prefecture/prefecture.html
そのSTLデータを利用して47都道府県の立体県別日本地図模型を作ることを計画しました。(細川氏)

― POLYGONALmeisterはどの工程で活用いただいたのでしょうか

計画は良かったのですが良く調べてみると、国土地理院から提供されるSTLデータそのままでは意図した形の模型が作れないことがわかりました。
例えば台座部を取り除かないといけない、加工機のワークサイズに収まるように縮尺を変えないといけない、素材にあわせて高さ方向も変更しないといけない。 とても手間な作業で47都道府県を作るとなると半年くらいかかることがわかりました。(萩氏)

― そこでPOLYGONALmeisterを?

なんとかSTLデータの編集作業を効率よくできないかと、ソフトを探していたところ、POLYGONALmeisterを知りました。 実際に使ってみると、直感的に操作ができますので、特に迷うこともなくスムーズに活用できました。
また、模型のSTLデータ容量は大きいのでパソコンの動きが重くなると心配でしたが、サクサク編集できました。 データ作成の工数が大幅に削減できたことで、加工を含めた日本地図の模型の製作も1ヶ月で作成できました。 予定の工数の6分の1です。とても助かりました。編集したデータはさらにCAMでNCデータを作り、マシニングセンターで加工しました。 3Dプリンターで作ることもできますが、機械加工だとより精緻に凹凸を表現するため、機械加工にて製作しました。(萩氏)

― 教材の反応はいかがでしたか?

模型は、展示会『見えない・見えにくい人のための福祉機器展in北九州 2017』(2017年7月開催)と、『第92回平成29年度全日本盲学校教育研究大会・名古屋大会』(2017年7月開催)に展示しました。
来場された視覚障害者の方には発見、気付きがたくさんあったようです。 例えば今回の日本地図では、関東平野の広がりや、濃尾平野の地形などが現代日本の形成に与えた影響などを考えるきっかけになったようです。 触れることで思考が広がります。今後も教材開発を進めていきたいと思っています。(細川氏)


製作した立体日本地図模型
縮尺:108万分の1(国土地理院データ)
高さ方向:5.4倍


筑波山周辺の模型


左:国土地理院からダウンロードした直後のSTLデータ(静岡県)
右:POLYGONALmeisterで海面部を取り除いたSTLデータ

今後の展望

― 視覚障害者の方向けの教材開発にあたり、今後の展望をお聞かせください

パソコンやスマートフォンのカメラで対象物と人の指の位置情報を認識して音声を付加する技術を研究しています。 この模型に音声案内機能を付加して、触ると解説が音で聞こえるようにしたいです。 また地図や人体図も今は紙教材ですが、本研究を応用して、解説をタブレット端末で読み上げるようなシステムを開発しているところです。(石丸氏)

立体日本地図模型については、POLYGONALmeisterを活用してせっかく良い編集データができたので、これを各地の盲学校にもっと広めていきたいと思っています。 データさえあれば、簡単に日本地図の模型を作れますから。(細川氏、萩氏、石丸氏)

― さらに考えられていることがあるようですね。

ひとつは各市区町村や、駅、デパートに設置するようなハザードマップです。 視覚障害者は災害対策から置いておかれている印象を持っています。 避難経路の触図(触って分かる図や絵)、例えば現在は駅のトイレの位置は金属板に点図で案内されていますが、 触って立体的に分かるようなハザードマップを作っていきたいです。 もうひとつは文化的な面になります。 欧米では美術館の絵画作品が立体化されていて、視力が弱い人でも触って鑑賞できるようになっています。 こういったことを日本でもやりたい。 POLYGONALmeisterでは写真をレリーフ化(立体化)する機能もあるようなので、次はレリーフ機能(※1)を使ってみたいです。(細川氏、萩氏)

超高齢社会が進み、これから見えにくい人が増えてくると思います。 そのような中、少しでも安心して生活できるような、また豊かに暮らせるようなものを開発していきたいと思っています。
なお、研究の成果については、音声触図学習システムのページ http://tars-jp.net で公開の予定です。(細川氏)



(※1)レリーフ機能について
POLYGONALmeisterのレリーフ機能とは、jpegなどの画像ファイルからSTLを作成する機能です。


― POLYGONALmeister GeoTIFF機能のご案内(β版)

国土地理院 基盤地図情報 5mメッシュ、10mメッシュの3Dプリントデータの作成も可能となります。
β版をご希望のかたはこちら>>

 

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